知られざるアニメーション 木を植えた男

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木を植えた男



フレデリック・バック/L'homme qui plantait des arbres/1987
 一粒一粒ドングリを植えていく事で40年かけて森を蘇らせた物語の主人公エルゼアール・ブッフィエの姿と、アニメーションの作者フレデリック・バックの2万枚に及ぶ作画の湛然な作業とがシンクロして、世間には認知されない無償の偉業を成し遂げた男への讃歌に心を打たれる。バックは、実際に5年半の歳月をかけてこのアニメーションを完成させたが、しかし木を植えた男、エルゼアール・ブッフィエは実存しない。原作者のジャン・ジオノは、この物語を実話と偽って出版社に送り、発表した。「クラック!」の成功で、この原作権を買ったフレデリック・バックも、しばらくは実話だと思い込んでいた。その事実を知った時のショック。しかし、バックはジオノと同じく、この物語を実話のごとくアニメーション化した。この経緯は「木を植えた男を読む」に詳しく書かれている。
 フレデリック・バックは、次の作品「大いなる河の流れ」でも、セント・ローレンス河の歴史をドキュメンタリーの話法で制作してる。アニメーションとドキュメンタリー、一見まったく違った技法にみえるが、ドキュメンタリーでも出来事の実際の映像だけではなく、多くは体験者への後追い取材でのインタビューで構成されていて、後で制作者が伝えたいテーマを元に映像を再構成している。その昔、ウィンザー・マッケイが「ルシタニア号の沈没」(The Sinking of the Lusitania 1918)で、実際の事件をアニメーションで再現した傑作があるように、映像が実写であるかどうかより、より迫真を持ってそのテーマを伝えられれば、アニメーションであっても観客はリアルな出来事を目撃、体感する事ができ、時には実写より普遍性をもって、息の長い作品となる事もある。  
 ブッフィエが実在しなくとも、世界中で彼に似た行為を続けている小さなブッフィエは、沢山存在していて、一人一人の心がけが世界を豊かにしていくという「木を植えた男」のメッセージは近年より切実なものとなってきていると感じる。
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■原作本 木を植えた男[Amazon]
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  1. 2006/08/16(水) 09:46:40|
  2. アニメーション作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

コメント

大好きな作品です

はじめまして。好きな作品が紹介されていたので、コメントを書きます。
この作品は、中学生の頃に知りました。それまでテレビアニメばかり観ていた私は、この作品を観て、改めて、アニメーションとは絵画が動くアート作品なのだと気づきました。その頃ちょうど、実話ではなかったという話しも友達から聞いていました。友達は怒っていましたが、私は特に、実話かフィクションかということにはこだわっていなかったので、怒りもしないし、驚きもしませんでした。たとえ物語が実話でなくても、バックの作品が木を一本ずつ植える作業と同じだから、その物語は真実だと思えたからです。
今日、「狩人と犬、最後の旅」という映画を観てきました。実際の狩人を実名で登場させたドキュメンタリーに近いフィクションでした。実際、彼は狩りをしているようでしたが、ちゃんと脚本があり、演技しています。この映画を観て、「木を植えた男」の逆だなぁ、と思いました。これらの作品を観るたびに、観客はノンフィクションかフィクションかを問うより、その物語のメッセージを読み取ることが重要なのではないかと考えます。山村さんが言うように、このメッセージは今、とても切実なのだから。
  1. 2006/08/16(水) 19:29:59 |
  2. えび #-
  3. URL |
  4. [ 編集]

フレデリック・バックとエルゼアール・ブッフィエの姿、とてもダブります。この作品はアニメーション作家が丹念に表現したからこそ、作品の持つテーマ性が説得力を持って血肉化できたのだと思います。しばらく見ていませんが、豊かに繁った森の描写、そこを訪れる人々の情景、とても美しいです。そして荒れ地の村だった頃の人々の嫉妬と憎悪に満ちた描写がとても印象深く残っています。美しさもさることながら、あの黒いネガティブな情念の描写はとても迫力がありました。…うろ覚えで恐縮ですが、ユダヤ教か何かの考え方で「この世界を支えている8人(12人だったかも?)」というのがある様です。この8人のうちの一人でも怠けると世界は破滅してしまうという…。フレデリック・バックとエルゼアール・ブッフィエ、そして山村さんの仕事ぶりを想像していたら、なんとなくそんな話を思い出してしまいました。私も頑張らなければ…。
  1. 2006/08/21(月) 15:07:39 |
  2. Re:Q #-
  3. URL |
  4. [ 編集]

「木を植えた男」はきっと、家族を亡くし1人ぼっちの自分と木のない土地とを照らし合わせてなにか感じたモノがあったのだと思います。そしてその男はコツコツと木を植え続け、荒廃した土地に希望を与えました。><
  1. 2010/12/09(木) 21:42:38 |
  2. mai #-
  3. URL |
  4. [ 編集]

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